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地球探検 アルゼンチン共和国 高山尚之隊員 8

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

地球探検

第8回 私の『衣食住』inオベラ -2- ~海を渡った五右衛門風呂~

    「配属先は亜熱帯に属する」との赴任前情報。よって「亜熱帯=一年中暑い」。何の疑いも持たなかった。でもアルゼンチンは大きな国だった―。

   7月の南半球は冬。赴任直後は首都ブエノスアイレスに滞在。街行く人たちの多くは、革のコートにブーツ姿。通販で購入した蚊帳(かや)は持って来たが、冬服は持って来なかった。すぐに品定め。が・・・「え~、何でこんなに高いの?」予想以上の値段にビックリ。日本やブラジル、アメリカ、ヨーロッパ諸国からの、質の良い衣類、電化製品、自動車等には、高い関税。日本で買うより高い物も。現地の収入を考えると、食料品以外は、全般的に値段は高いようだ。

    配属先のオベラので住まいは、4階建ての家具付きアパート。キッチン、15畳ほどのリビング、大小の寝室3つ。そして、水洗だが、ここオベラでは、紙を流せないトイレ(こちら製の紙は水に溶けにくい?配管の問題?)付き浴室が2つ。家賃は約4万5千円。地方としては広さ・設備・家賃ともごく普通。   冬、日中25度くらいの時もあり、半そで姿の人も。そうかと思えば、朝晩や太陽が出ない日は吐く息が白い。(これも、予想が大はずれ!)冷たい浴室。バスタブなし。電気温水タンクのシャワーのみ。容量は50?。冬場、3分もしたらもう終わり。お湯を出し続け、体を温めながら洗う、なんてことは無理。まずは、浴室にストーブを入れ暖める。湯舟なしの生活は初めて。車で20分も走れば、温泉にだって行けた福島。「たっぷりの湯につかって…」。1年経った今も、お風呂が恋しい。

   雑談でわが家の風呂事情を話していたら、隣町の1世の方が、こんな話を…。移住した45年前、日本から自転車、リヤカーなどとともに、家財道具を中に入れ、持って来たのが「五右衛門風呂」。ドラム缶を持ってきた家庭もあったとか。それだけ「お風呂」に対する思い入れが強かったそうだ。こちらでも、今はもう時代に合わないが、もったいなくて、捨てられないという。昔、自分も福島の実家で入っていた、あの懐かしい風呂が、まだまだ現役。薪で風呂をわかす。「特に冬はいいねえ。温まるよ~。近くに住む孫たちも、よく入りにくるよ」。こんな遠くにも、ちゃんと日本の文化が残っている。今度、ぜひお願いしてみよう。「五右衛門風呂、ポル・ファボール(お願いします)!」。

五右衛門風呂

五右衛門風呂。鉄製の釜に水を入れ、直火で温める。移住当初は、庭に風呂小屋を建て、釜をむき出しの状態で置き、使っていたそうだ。写真は、数年前にタイル張りに改装した浴室。たき口は屋外にある。

五右衛門風呂 たき口

(日系社会シニア・ボランティア 日本語教育 高山 尚之)