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地球探検 パプアニューギニア独立国 泉田裕章隊員 11

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

 地球探検

レポート11

11. パプアニューギニアの感染症

 私は今、青年海外協力隊の理数科教師として、パプアニューギニアのマヌス州、州都ローレンガウのマヌス・セカンダリー・スクールに配属されています。 今回は、「感染症」についての話をしようと思います。

 感染症とは、微生物の感染によって起きる病気、伝染病を言います。日本では馴染みのないマラリアやデング熱、狂犬病なども感染症の一つです。今回はその中でも、ここパプアニューギニアで特に問題視されている3つの感染症について話したいと思います。

   ・AIDS(後天性免疫不全症候群、略称:エイズ)

  主に性交渉や注射針の打ちまわし、出産時などの血液接触を通してHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して発症する感染症の一つです。HIVは通常の環境では非常に弱いウイルスで、一般に普通の社会生活をしている分には感染者と暮らしたとしてもまず感染することはありません。主な感染経路は3つあり、性的感染、血液感染、母子感染です。現在エイズを完全に治療する薬は開発されておらず、病気の進行を抑える薬しかありません。

  パプアニューギニアでは最近感染が広がりつつあり、現在の感染率はまだ1%未満と言われていますが、都市部から地方へと感染地域が移行しつつあるようです。

  感染を防ぐために、学校や公共の場で啓発活動が行われています。写真は12月1日のワールドエイズデイの時の様子で、カトリック系のグループを中心に若者や子供達がみんなでエイズのカラーを示す赤のティーシャツを来て、タウン地区を練り歩くイベントに参加しました。

  エイズは性的な事柄が関係するので、恥ずかしい気持ちから啓発活動などは避けられ気味なので、このような機会を通じて大々的に啓発活動を行うのが、効果的です。

エイズ デモエイズ デモ2

・Tuberculosis(結核)

  結核は結核菌によって引き起こされる感染症です。くしゃみや咳など空気感染により伝染し、発見や治療が遅れれば死に至る事もある危険な感染症です。日本でも昔は死亡率の高い病気でしたが、現在では感染者が少なくなり、適切な治療法もあるので死亡率が低い珍しい病気になりました。しかし、まだまだ医療環境の整っていないパプアニューギニアでは、村の中で感染が広がり、発見が遅れたために子供が亡くなったり、後遺症が残ったりするケースがあります。また、治療には3~6ヶ月もの期間で薬を飲む事が必要とされており、途中で治療を辞めてしまうケースも多く見られます。

  写真は、感染症対策の小野藤隊員(平成23年度4次隊)が結核患者疑いの多いと言われる村に結核のスクリーニング検査に行った時に撮ったものです。結核担当の職員がスクリーニング検査の後に、子ども達を集めて結核について説明しています。

  パプアニューギニアでは国をあげて予防や対策を講じていますが、いまだに死亡原因が上位である感染症であり、犠牲者を減らすには、まだまだ多くの時間や援助が必要です。

結核の説明風景

・Filariasas(フィラリア症)

 フィラリアは細長い糸状の線虫類に属する微小の寄生虫の総称で、それが体内に入ることで起こる感染症、それがフィラリア症です。通常、フィラリア症は風邪のような症状で深刻なものではありませんが、ある種のフィラリア幼虫が体内に寄生することによってリンパ管が炎症を起こし、それが原因でリンパ管が詰まったり破裂する事によって、象皮病という後遺症を引き起こすことがあります。

  象皮病は、体の一部(特に腕や脚、乳房や睾丸)が異常に腫れて硬くなります。病気の進行は5年から10年かけて徐々に進み、更に一度腫れてしまった患部を元の状態に戻すことは非常に困難です。

  写真は、感染症対策の小野藤隊員(平成23年度4次隊)がフィラリア症の感染率が高い島で見かけた象皮病を患っている男性を撮ったものです。右足が腫れているのが見て分かると思います。皮膚は硬化しており、この症状が更に進むと歩行困難に陥る可能性もあるので、マッサージをして患部をほぐし、歩行補助のリハビリをします。

  フィラリア症は死に至る病気ではなく、早期に薬を内服することによって予防、回復することができます。しかし国としても力を入れて対策をしている感染症ではありません。何も対策を行わなければ、感染地域は徐々に広がっていき、差別や偏見などが生じてしまいます。

象皮病の男性

 

パプアニューギニア独立国 泉田裕章 平成23年度3次隊 職種:理数科教師 配属先:マヌス・セカンダリー・スクール