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地球探検 ウガンダ共和国 田中俊隊員 6

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

地球探検

ウガン便り

Vol.6 井戸について知ろう!

  Bassebo ne bannyabo, muli mutya?(皆さん、お元気ですか?)
  私は東アフリカのウガンダ共和国で、村落開発普及員として地方給水整備に従事しています。今回は今日の日本では馴染みのない、しかしウガンダや他のアフリカ諸国で広く普及している井戸についてお伝えしたいと思います!

   日本では井戸は最近ではほとんど見ることはありませんが、以前は水を得る重要なツールとして広く利用されていました。
   江戸時代の下町地域では埋設管路からの取水のための「堀井戸」が普及しました。つるべと桶を使ったつるべ式井戸(写真1)でおなじみですね。明治時代以降、更に深い帯水層まで掘り抜く「堀抜井戸」が普及しました。堀井戸よりも深くから取水するため手押しポンプ(ハンドポンプ)が使われ、昭和初期から昭和20年代頃までよく利用されました(写真2)。堀抜井戸の掘削技術では、少ない機材と人員で500m以上の掘削が可能な「上総(かずさ)堀り」(写真3)が有名で、上総堀りによってウガンダの村人の飲み水を確保する、というTV企画もあったのでご存じの方も多いかと思います。

つるべ式井戸 ←写真1 つるべ式井戸

昭和初期の手押しポンプ←写真2 昭和初期の手押しポンプ

上総掘りの技術←写真3 上総掘りの技術

  他方、「ウガン便り Vol.4 ムピジ県の水事情」でも写真をご紹介しましたが、ウガンダでは手押しポンプ(ハンドポンプ)が普及しています。ただし、私たちのイメージにある井戸ではなく、鉄製のゴツイ形をしていて、U-2、U-3 Modified、Nira AF-85 Pump……など、まるでロボットのような名前で呼ばれています(写真4・5参照)。構造(図1参照)は少し複雑に見えますが意外にシンプルで、ハンドルの上下運動に合わせ圧力の下がったシリンダー内に地下水が入り込み、さらに連続的なハンドルの往復による圧力の変動でパイプを伝い蛇口から出てくる仕組みになっています。   

さびにくく耐久性の高い井戸←写真4 U-3 Modified プラスチックパイプなので、 さびにくく耐久性の高い井戸 

自転車のようなシンプルな形で、子どもにも汲みやすい井戸←写真5 Nira AF-85 Pump 自転車のようなシンプルな形で、子どもにも汲みやすい井戸

図-1 ハンドポンプの構造 図-1 ハンドポンプの構造
  さて、「水道や給水施設を整備したらいいのではないか」と思う方もいらっしゃると思います。もちろん首都カンパラや地方都市では上下水道が整備されていますが、全国的に見ると整備されていない地域が多く、村落部に行けば行くほど井戸への依存率は高くなります。井戸は安いコストで投入可能であり、1基建設すれば50~300人の人々に安全な水を供給できます。また、水道の発達している都市部でも停電が続くと水道網がストップし断水となるため、井戸と併用している地域も少なくありません。  今の状況を見る限り、ウガンダ全国的に上下水道が整備されるのはまだ先で、当面は井戸を使った給水に頼ることになりそうです。

(2012年9月)

田中 俊 平成22年度1次隊 村落開発普及員 ムピジ県水衛生事務所