【2017年9月20日(水曜日)】 Vol160
目次
- リレーエッセイ
県教育庁県立高校改革監 岡崎 拓哉(おかざき ひろや) - 日々の思い
平成28年度教育者表彰(文部科学大臣表彰)
前白河市立白河第二中学校長 面川 三雄(おもかわ みつお) - 「おすすめの一冊」コーナー
- 読者投稿欄「みんなの学舎」
県教育庁参事兼高校教育課長阿部 武彦(あべ たけひこ) - 「こんにちは!各所館です」
- お知らせ
- 県教育委員会からのお知らせ
- 県立美術館からのお知らせ
- 県立図書館からのお知らせ
- 編集後記
教育総務課長 高橋 洋平(たかはし ようへい)
リレーエッセイ
「県立高校改革の視点」
県教育庁県立高校改革監 岡崎 拓哉(おかざき ひろや)
この4月から、初めて教育庁に勤務し、手探りで県立高校改革に取り組んでいます。
6月に学校教育審議会からの答申をいただき、これを踏まえて、現在、10年後を見据えた改革の基本計画策定の作業を進めているところです。一方で、計画に先行して、1学級規模での本校化を実施するため、湖南高校、西会津高校、川口高校で、地域の皆様との懇談会を何度か開催しました。いずれの高校も、地域から学校に対する多くのご支援をいただいており、地域の子どもたちのみならず、他地域からの生徒も含め、少数の生徒ながら手厚い教育が行われています。
懇談会では、学校の存続が大事、手厚い教育の継続に向けた教員確保や他の学校にない魅力化が必要など、様々な意見をいただきましたが、地域の皆様が一様に、学校に対する強い想いを持っておられるのが非常に印象的でした。計画策定に向けても様々なご意見をいただきますが、地域にとって、学校はなくてはならないというのは皆さん同じであり、こうした地域の想いをしっかりと受け止めながら、高校の在り方を考えていかなければいけないと考えています。
学校についていろいろと意見をいただきますが、一方で、意外に見えづらいのが子どもの想いです。昨年度の学校教育審議会の教育公聴会では、子どもたちの意見を伺う機会も設けましたが、子どもたちの考えをできる限り把握し、子どもが望む高校、将来の進路、さらには子どもたちのための福島県の未来といった子ども中心の視点を常に念頭に置かなければいけないと自分に言い聞かせています。
私事ですが、ちょうど今年、自分の子どもが小学校に入学しました。10年後と言えば、子どもが高校生の頃。我が子を通わせたい高校というイメージも持ちながら、県立高校改革に取り組んでいきたいと思っています。
最近、浜口倫太郎さんの「廃校先生」という小説を読みました。廃校が決まっている児童7人の小学校の最後の1年という、ありがちな設定で、いわゆるおはなしですが、子どもの学校や友達への想い、先生や親、地域の人々の子どもへの想いが丁寧に描かれており、小説では久しぶりに泣かされました。この中に、「学校は種火のようなもので、地域の人は元気のないときは、種火から火をもらうように、子どもに元気をもらいにいく」といった表現があり、学校と地域の関係がうまく言い表されています。
学校という種火が地域の火を灯すとともに、子どもの将来をも明るく照らす火にしていくといった視点で、学校を捉えていけば良いのだと改めて感じたところです。
日々の思い
「声なきシグナルを見つけ出す」
前白河市立白河第二中学校長 面川 三雄(おもかわ みつお)
今年の6月19日「栃木県足利市の中2女子生徒行方不明」、その後6月20日に無事保護されたと報道がありました。警察の話では女子生徒は「自転車で北千住まで来た。道の駅で一晩過ごした。」また、「部活動をやめたかった。学校に行きたくなかったので、家を飛び出した。」と。
学校に通学する子どもの心の中は見えません。しかし、子どもの行動や表情等から心の変化を感じとることはできます。「何か、いつもと違うかな」というようにいろいろな視点から子ども達を見ていくと、声なきシグナルに気付くことができると思います。
NHKの「総合診察医 ドクターG」の5月の放送の中で、「右胸が痛い」と訴える女性の症状が紹介されました。この番組はドクターGが実際に経験した症例に、3人の研修医が症状を考え病名を突き止めていく病名推理番組です。
最初の再現VTRでは、女性は「右胸が痛い。痛みはピリピリと痛く2週間くらい前から痛い。2ヶ月くらい前から背中が痛い。1年前くらいから右腕がしびれる。」と話をしていました。研修医の3人はこの段階で病名を「帯状疱疹」「抗リン脂質抗体症候群」「糖尿病性ニューロパチー」と予想したのです。再現VTRの続きで女性はいろいろな所が痺れ、整形外科でレントゲンを撮った時は異常がなく、3人の研修医たちがカンファレンス(症例検討会)で鑑別診断を行い、最終診断として「カウザルギー」「身体症状症」「うつ病」とそれぞれ診断しました。最後に、病名とその病気にみられる様々な症状の可能性について検討した結果、「身体症状症」(精神科の疾患)という結論に至ったのです。
「胸が痛い」という症状と精神的な疾患とは結びつきません。しかし、総合診察医ドクターGは患者と向き合い、今までの経験・知識等いろいろな条件を勘案して診断したのです。
教員も同じであると思います。学校は忙しい毎日ではありますが、日常の学校生活の中で目の前の子どもと向き合い、子どもの声に耳を傾け、子どもの行動を気にかけて、違和感を感じたならその時、「何か元気がないね。どうしたの」と声をかける。「ファーストインプレッション」が大事であると思います。
その後も目をかけ、手を差しのべ、子どもとのコミュニケーションを持つことにより子どもの声なきシグナルを拾い上げることができると思います。子どもが楽しく通える学校にするためにも。ふくしまの未来を担う子どもの尊い命を守るためにも。
※面川 三雄先生は、平成28年度教育者表彰(文部科学大臣表彰)を受賞されました。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書の「お薦めの一冊」を御紹介します。
おすすめの一冊 『学校で知っておきたい著作権(全3巻)』小寺信良/著汐文社2016年から2017年
私たちの身の回りには、たくさんの著作物や、それを複製できる機器があります。今や誰もが、著作権と関わらずにはいられません。このシリーズでは、「本の一部をコピーして授業で配ってもいいの?」などの実例に即したQ&Aに加えて、その根拠となる法律や考え方も紹介されています。子ども向けの本ですが、詳しい解説やコラムなどもあり、大人も一緒に学べます。著作権の仕組みを知って、安心して著作物を利用しましょう。
福島県立図書館
→https://www.library.fks.ed.jp
読者投稿欄「みんなの学舎」
「9月になると考えること。」
県教育庁参事兼高校教育課長 阿部 武彦(あべ たけひこ)
9月は、初めて子を授かった月で、この時期になると、親と子についてよく考えます。
子を思わない親はいません。万葉の昔より、「瓜食めば子ども思ほゆ 栗食めばまして偲はゆ」と読まれた心情は変わらないと思います。この長歌の反歌は、「銀も金も玉もなにせぬに勝れる宝子にしかめやも」です。子は、銀よりも金よりも勝るものであることは、昔も今も変わらぬ事なのです。
しかし、そのことを疑わなければならない事件がやまず、心痛むことがあります。私事ですが、病で泣き止まぬ子を5階のアパートから車まで運んで、30分ぐらい町を走ると、すやすやと眠り、そっと5階まで戻して布団に寝かすと、ものの10分もたたぬうちにまたぐずりだし、再びドライブとなった夜がありました。何回も5階を往復することが何日も続くと、疲労困憊となります。ですが、子どもの寝姿は無邪気であどけないので、泣き濡れた頬とその寝顔に、いきどころない疲労感が救われたことも事実です。決して子どものことを怒ったりする必要がないことを親として徐々に学んでいくのであり、その時間が親となる時間ともなるのでしょう。その時間を持てないと、たたいたり揺すったりしてしまうこともあるのが子育てというものなのでしょうか。
翻って、親を思わない子はいません。どのような子どもでも、親を心から慕っているのが人の情けであります。親の後ろ姿を見て子は親のことを考え、少しずつ次第次第に、いかにすれば親に負担をかけることがなくなるかを考え、親がいつも自分のことを思ってくれていることを肌身で感じつつ、その親の思いに報いることができるように、子は子なりに一生懸命気を配るものではないでしょうか。
時に、その思いがすれ違って、親だからこそ気持ちをぶつけてしまったり、心にもないことまで言わなければならない過ちを犯したり、親を疎んだりしてしまうこともあるのが世の常です。しかし、特に、親を亡くした経験をすると、亡くしてから初めて気づく親への感謝ということもあります。親を亡くした悲しみも、死を迎える順番だから致し方ないということで、次第に自分の中で片付けていかなければならないこととなることも経験して初めて気づいたことです。
「親の心子知らず」という言葉があります。幸田露伴の子の幸田文が、このような言葉を残しております。「私の父は、あるときに言いました。『おまえは心の中に醜いところがどっさりある。そのために泣くことが多くてかわいそうだ。おまえのそのいやな性格というのは、俺はどうしてやることができないけれども、その足りないところ、欠けたところというのは、かがんだ姿勢と同じなのだ。それは立つときは、倍の力になる。泣いているおまえを見ると、かがんでいるから、あいつは今に立てる、立つ時は、きっと勇気を持って立つだろうと思う。おまえは、その欠けたところをいいところと同じようにかわいがって、もっていってくれなあ。それが生んだ者がはなむける言葉であり、親の心というもんだ。』」(「幸田家の言葉」より抜粋)
厳格であった幸田露伴が、幸田文の所作の隅々まで(例えばぞうきんの絞り方等)しつけていたというエピソードの陰にあったこんな言葉を知ると、蝸牛庵(幸田露伴の住居)主のひげの重みが伝わってきます。
翻って、「子の心親知らず」ということがあるとすれば、あまりにも軽率であった時々の思いがふとよみがえります。仕事ばかりの毎日に、子への思いなど忘れていても子はいつも親を思っているのであったと気づかされたこともままあります。誕生日や父の日に何気なく書いてくれた手紙や絵を人知れず鞄の中に持ち歩いて、心のいさめとしています。
しかし、その子の心を肝に銘じておかないと間違うことも起こるのだと考えます。順番であると片付けていける人の死が、逆になったときの悲しみはいかばかりのことでしょうか。決して片付けることができない思いを、人に起こさせてはなりません。特に9月は、子ども達の心がさまよう気配があるので、心してかからなければと気を引き締めていくことが何よりの務めと思います。
子ども達の眼差しが、私たち教員の生きる糧であります。子ども達の笑い声が明日のためのエネルギーです。子ども達は、きちんと考え、きちんと育っていくものです。教え育てることばかりではなく、教わり育つ側の身になることが肝要であると考えます。
翻って、「師の心子知らず」ということは決してなく、いつも師の心を探しているのが子や弟子なのであると考えます。また、教えの道に携わる者として、「子の心師知らず」ということだけは絶対に避けなければならないはずです。
先に歩く者として親や師が、子や弟子や教え子に歩く道筋は見せなければならないと思います。「教え」ようという高いところからの目線ではなく、「語る」「伝える」「聞いてもらう」視線を持ち続けることで、何かを伝播していけることができれば本望です。その後の進むべき道は、子や弟子や教え子が自分で決めていくはずでしょう。今までの教え子達も時に迷いながら自分の道を探り、一歩一歩歩いていることを信じます。時に休んだり、時に振り返ったりしながら、もう一度歩き出す日々を送っていることと思います。私は心からそう信じて、今日も一歩、前に進もうと思っております。
※ 読者投稿欄「みんなの学舎」では、皆さまからの原稿を募集しております。
詳しくは教育総務課のホームページをご覧ください。
教育総務課 024-521-7759
→ メールマガジンのページ
「こんにちは!各所館です」
「こんにちは!各所館です」は、福島県教育委員会が所管する各教育事務所及び各所・各館の取組みを紹介するコーナーです。
『福島県教育センター』編
福島県教育センターでは、昨年度から初任者研修を修了した採用2年目の教員を対象に、2年次教員フォローアップ研修を実施しています。これまでの初任者研修から経験者研修1(採用後5年を経過した教員)の間に研修の機会を設けて、継続的・効果的に研修を行うこと、初任段階の教員を複数年にわたり支援し、研修意欲を持続させ資質向上を図ることを目的に行っている研修です。
今年度受講者の感想の一部を紹介します。
「教員2年目を迎え、自分の授業を見直す時間がなかなかとれなかったので、久しぶりに他の先生方に授業を見ていただき、助言をいただくことができました。
また、手立てや発問について深く考えることができ、とても有意義な時間となりました。」(小学校)
「昨年の初任研の際よりも学びが深まったり、つながったり、広がったりする場面が多く、とても有意義な研修となりました。また、同期の先生方の近況や取組みを知ることができて、自らの今後の大きな励みとなりました。2年目ならではの悩み・課題の共有、それに対するご指導もとても参考になりました。」(中学校)
「フォローアップ研修では、自ら計画し進めるということで、多くの情報が必要であると考えていました。その中で、今回の研修を受講して、各先生方から様々な情報を得ることができました。それらを生かして研修を進めるとともに、生徒を第一に考えて、教員生活を送っていきたいと思います。」(高等学校)
また、今年度は東日本大震災により福島県希望枠として東京都に採用され、本県に移られた教員を対象に「福島県採用希望枠教員研修」を行いました。この研修は、本県の教育施策についての理解を深めるとともに、これまで経験を生かして本県及び自校の教育課題を解決することをめざす研修を行うことにより、本県教員としての自覚と指導力を高めることを目的に行っております。
受講した先生方の感想の一部を紹介します。
「東京から戻った教員が同じ場で学び合える機会はなかなかないので、とてもよい時間となりました。経験を生かしていこうという気持ちを新たにできたと思います。」(小学校)
「東京と福島の違いについて感じていたことを話すことができ、解消していく手立てを探ることができました。」(小学校)
以上が、昨年度又は本年度新たに実施している研修で、その他、基本研修、職能研修、専門研修も実施しています。また、カリキュラムセンター事業、情報教育事業、うつくしま教育ネットワーク事業、教育相談事業、教育図書・資料事業にも取組んでいます。
なお、11月30日(木曜日)に行う「福島県教育研究発表会」では、福島県内の公立学校教員の優れた研究成果を共有するとともに、発表を通して県内各園・各学校の実践の交流を図りたいと考えております。主な発表内容は以下のとおりです。
- 校種共通研究発表
- 小学校研究発表
- 中学校研究発表
- 高等学校研究発表
- 教育センター研究発表
福島県教育センターWebサイト
→ http://www.center.fks.ed.jp
お知らせ
信号待ちの小学生。「降ってきたね。」とつぶやく男の子。「きっと、通り雨だよ。」と隣の子。「じゃ。虹が出るね。」と女の子。どんどん前向きになる会話に、思わず空を見上げてしまいました。
さて、ここからはお知らせコーナーです。
「うつくしま教育通信」読者のみなさまへ
いつも福島県教育委員会メールマガジン「うつくしま教育通信」をご愛読いただき、ありがとうございます。この度、本メールマガジンを運用しているメールサーバの更新に伴い、現在のアドレスからの配信は、本日配信のvol.160をもって終了することになりました。このため、別サーバで新たなメーリングリストを作成し、次回、10月20日(金曜日)配信予定のvol.161は、新しいアドレスからの配信となります。
なお、メーリングリストの移行作業はこちらで行いますが、登録の際に確認メールが自動配信されますので、「@fcs.ed.jp」からのメールは受信可能な状態にしておいていただきますようお願いいたします。
また、「うつくしま教育通信」が届かなかった場合や間違って届いた方を見聞きした場合は、大変お手数ですが、下記のアドレスまで御本人様より御連絡いただきますようお願いいたします。
皆様の御理解と御協力をよろしくお願いいたします。
教育総務課 024-521-7759
→ [email protected]
県立美術館からのお知らせ
[企画展]「生誕110年・没後20年記念 斎藤清からのメッセージ」
日時:10月7日(土曜日)から12月10日(日曜日) 月曜日休館
時間:9時30分から17時00分(最終入館は16時30分まで)
場所:福島県立美術館
内容:
当館の斎藤清コレクションは、開館にあたり1980年に作家本人より代表作をご寄贈いただいたのが始まりです。最終的には約500点にもなった作品に、斎藤はどのようなメッセージを込めたのでしょうか。今回の企画展では、版画を始めた初期の作品から、国際的な舞台で活躍した50年代の作品、ライフワークとして再び《会津の冬》に取り組んだ70年代の作品、さらに晩年の作品まで、約230点の作品と資料で、その画業を振り返ります。特に、1970年からの<会津の冬>シリーズは、115点すべてを展示します。多彩で魅力あふれる斎藤清芸術をご堪能ください。
観覧料:一般・大学生1,000円、高校生600円、小・中学生400円
[イベント]「ワークショップマート ものづくりの庭」
日時:9月23日(土曜日)
時間:10時00分から16時00分
場所:福島県立美術館の庭園エリア(雨天時は美術館内エントランスホールで開催)
金額:入場無料。材料費は各店500円から1,000円 。FOODの出店もあります!
内容:
美術館に1日限定の不思議なマーケットがやってきます!マーケットと言っても、ただのお店ではありません。お店では、漆や植物を使った工作、自分だけのハンカチ作りができ、ひとつひとつのワークショップは、美術館の収蔵作品たちがテーマになっています。事前申し込みは不要となっておりますので、お気軽にご参加ください。
主催:福島県立美術館・NPO法人福島県立美術館協力会
企画:FRIDAY SCREEN
→http://www.Friday-screen.com/workshopmart/
県立美術館 電話024-531-5511
→ http://www.art-museum.fks.ed.jp/
県立図書館からのお知らせ
[展 示]「宇宙への誘い」
期間:9月8日(金曜日)から11月1日(水曜日)
場所:エントランスホール 展示コーナー
9月12日の「宇宙の日」と10月4日から10日までの国連「世界宇宙週間」にちなみ、世界の宇宙開発を中心に、宇宙の魅力を伝える資料を展示します。
県立図書館
→ 企画管理部 電話024-535-3220
→https://www.library.fks.ed.jp
編集後記
先日、林文部科学大臣による小高区4小学校の視察に御一緒し、ロボットを使ったプログラミングの授業を拝見しました。子供たちがパソコンで簡単なプログラムを書いて、ロボットと会話を成立させる授業でしたが、子供たちは極めて自然にロボットとの会話を楽しみながら、学びを深めていました。ロボットのテストフィールドの完成が待たれる南相馬らしい授業でした。
また、率直に音声認識と言語に関する技術の進歩はすさまじいな、とも思いました。さながら映画「スターウォーズ」に出てくるロボットのよう…。科学技術に詳しくない私は、人間に取って替わられるのではというある種の「恐れ」も感じたところです。スティーブン・ホーキング博士も、「完全な人工知能が開発されれば、人類を終焉に導く可能性がある」と話しています。
先月のメルマガで小野委員が書いていたとおり、AIの進歩により教育の役割も問われていると感じますし、知識の記憶・暗記を追い求める教育ではなく、主体的・対話的で深い学びが求められるという認識は、私もその通りだと思っています。
さて、世間ではAIが人間の知性を追い抜く時点(シンギュラリティ)が、いつ、どのように訪れるのかという議論が活発になされていますが、私がここで論じてみたいのは、逆に『AIが人間に取って替わることができないものはあるのか?』ということです。
学習指導要領の改訂に向けた中央教育審議会の審議まとめにおいては、AIにできないのは「目的を自らつくりだすこと」であるとしています。この説は一定の納得は得られるのですが、ディープラーニングや言語に関する技術が進めば、自ら考え、目的さえも作り出すAIが開発されてもおかしくありません。
では、『AIが人間に取って替わることができないもの』は何かということを突き詰めて考えると、シンプルな話ですが、AI・ロボットには「命」が無いということかと思います。「命を生むこと」もできません。これは決定的な違いで、震災後に命をめぐる優れた道徳教材をつくって、指導してきた福島から発信できる価値は高まると思っています。
命の尊さ、人間の尊厳、人権、倫理などの価値に思いを致すとき、我々はAIを超克できますし、人格の完成を目指すという教育の目的は普遍と思われます。なんだか難しい話になってしまいました…すみません。いつも編集後記が小難しい!と御指摘いただくもので…。悪しからず…。
教育総務課長 高橋 洋平(たかはし ようへい)