DAY 3
BANDAI-ASAHI NATIONAL PARK
初夏には美しい蓮の花に彩られる、長照寺。野口英世の菩提寺であり、猪苗代三十三観音の地として知られるこのお寺で、日常から離れてじっくりと自分自身と向き合う特別な時間を過ごします。早朝6時、蓮のお香を焚いた本堂でヨガインストラクター 玉水まどかさんの指導による朝ヨガが始まりました。
「ヨガによって得られる心地よさや人生のワクワク感を多くの方に広めたい。それはきっと、逆境に打ち勝つための心の強さや余裕に繋がっています。」という玉水さんの言葉を聞きながら、呼吸に集中していきます。
「在宅勤務で姿勢が悪くなると、身体に直接的な痛みが出るだけでなく、呼吸が浅くなり不安になったりストレスが発散しづらくなったりと、心にも支障が出てしまいます。」と玉水さん。呼吸への集中とリラックス、その両方を体感して心と身体を解放したら、長照寺のご住職である楠さんの説法とともに座禅を組みます。
「座禅とは、自分の身体に自分の心を戻してあげること。」という楠さんのお話に深く頷きながら、参加者は皆、内なる自分との対話を楽しんでいました。
『ヨガと座禅は親和性が高く、これからの日常でも行えそう。』『社員研修に座禅を取り入れる会社も多いが、ヨガや食など、プラスαの体験があるとさらに価値が高まると思う。』といった意見が出ました。
猪苗代湖に自生するヒシは、繁殖力が非常に強い水草。秋になると腐敗し、猪苗代湖の水質を悪化させる要因の一つとされています。これまではお金をかけて駆除していた地域の厄介者ヒシの実を観光資源として活用し、町のPRにも活かそうというのが猪苗代町地域おこし協力隊の活動です。
地域おこし協力隊 長友さんから活動内容の説明を受けた後、製品化されたヒシ茶を味わいながら、ゆでたヒシの実の殻剥きを体験。調理後のヒシの実を実食しました。
『トウモロコシにも似た風味があって、意外なほどおいしい。しかしこの殻の硬さ、剥きにくさが課題。』『マキビシの大元になったというヒシの実。初めて見た人にはそれが何なのか全く予想のつかないそのユニークな外見を活かしたワークショップを企業向けに実施し、課題解決の能力を身につけるなど、いろいろなプログラムの造成が可能だと思う。』と、初めて触れ、味わうヒシの実の不思議さに、参加者からもたくさんの質問や意見が出ました。
磐梯山と猪苗代湖の間に広がる平野、その真ん中に立つゲストハウス「Hanbog」。オーナーの佐川さんは、「猪苗代を眺められる宿泊施設はあるけれど、磐梯山を眺められる宿泊施設は意外と少ない。だから、ゲストハウスの建設はこの場所に決めました。」と語ります。
雄大な磐梯山を眼の前に、韓国スタイルのバーベキューランチを楽しみながら、佐川さんの話を伺います。K-POPが大好きだったことから韓国そのものに興味を持ち、約5年半の韓国留学を経験した佐川さん。
「留学中に痛感したことは、福島に関する正しい情報が届けられていないということ。大好きな韓国で、大好きな福島が風評被害を受けることがとても悔しかった。だから、福島にゲストハウスを作り、本当の福島を発信することで、福島の復興を後押しし、少しでも正しい福島を知ってもらいたいと考えました。」
県外、そして海外から訪れる人たちに福島の良さを知ってほしい。そんな思いから佐川さんは、客室に福島ゆかりの地名を名付け、福島産の野菜やお酒などで出迎えてくれます。
参加者からは、佐川さんの真摯な思いに『風評被害を防ぐため、真実を現地から伝えていくことの重要性に改めて気づかされた。』といった意見が出ました。
食後には2泊3日を振り返って、意見交換会を開きました。
『人として美しい暮らし方を実践しようとしている人が多いイメージ。ライフスタイルが学べる場所=福島、という切り口もおもしろいかもしれません。』
『福島といえば震災復興、というのが真っ先に思いつくが、復興に焦点を当てすぎない方が、それぞれのコンテンツの魅力がはっきりと見えてくるのかもしれません。』
『これまでは新幹線で通過する場所というイメージでしかなかった福島だが、魅力や奥行きを感じ、ポテンシャルの高さに驚きました。』
『ひとつひとつの場所や人、点としての多彩さや魅力もいいが、点と点を結んだときに見えてくるストーリーをもっと強化した方が良いと思います。』
『自分だけの特別な場所や、長いスパンで楽しめるサードプレイス(自宅でも職場でもない、第3の居場所)を求めている人が今は多いと思います。そういう人がハマることのできる“関わる余地”を作れる場所だと思うので、継続的な訪問に繋げられるのではないでしょうか。』
『今回出会ったたくさんの人が、震災や事業の衰退などによる挫折を経験している。そのどん底からのリスタート、成功までの軌跡は企業にとっても有用な学びになると思います。』
『コロナ禍によって数多くの企業や自治体がダメージを受けている今、そこからどう再起するかという大きな課題に対するヒントを持ち帰ることのできる場所=福島というイメージが確立できる可能性を感じました。』
挫折をバネに再起や新興を成功させようとしている福島の人々の姿が、多くの企業にとっても学びの場になり得るということが発見できたツアーでした。