2021年7月に尾瀬沼ビジターセンターがリニューアルオープンしました。
建替えに伴って展示物も刷新。尾瀬の成り立ちや生息する動植物について、より視覚的、体感的に学ぶことができるようになりました。
今回の建替えによってビジターセンターは三代目。初代(1964年〜1985年)、二代目(1986年〜2021年)と50年以上に渡って、福島県側の尾瀬の情報発信拠点として利用されてきました。
新しいビジターセンターは広い展示空間を確保できる構法が用いられ、外装、内装には木材を使用し、既存施設に合わせた色調にするなど、国立公園にふさわしいデザインとなっており、木のぬくもりを感じられます。
自然公園の保護と利用を進めるための公園事業施設の一つである博物展示施設に該当しており、「主としてその公園の地形、地質、動物、植物、歴史等に関し、公園利用者が容易に理解できるよう、解説活動又は実物標本、模型、写真、図表等を用いた展示を行うために設けられる施設と定義されています。
尾瀬沼ビジターセンターにおいては、(公財)尾瀬保護財団が管理運営し、常駐の職員が尾瀬の自然についての情報提供を行っています。常設の展示の他に、職員が収集した自然情報が館内に掲示されているので、尾瀬沼周辺の散策前に、是非立ち寄りましょう。情報提供の他に、国立公園内の巡回、インタープリテーション、植生復元などの尾瀬の自然を守るための活動拠点にもなっています。
展示スペースは天井の高い開放感のある空間で、旧ビジターセンターより展示間隔が広がり、じっくり観賞できます。
レクチャー室はプロジェクターや音響設備が充実。定期的なスライドショーイベントや学校団体向けのプログラムなどを実施しています。またレクチャー室は可動間仕切りにより、人数やイベントに合わせた部屋の大きさにすることが可能。プログラムが行われない時間帯は開放され、休憩室として使用しています。
常設展示コーナーでは尾瀬に棲息するホンドギツネの剥製やニホンジカ、ツキノワグマ等の毛皮を展示。現在はこれらに触れられませんが、コロナ禍終息後は実際に触って感触を確かめることができる予定です。
新展示でイチオシとなるのが「尾瀬の成り立ち」が解るCG映像動画です。
「尾瀬の貴重な動植物は、特殊な尾瀬の自然環境に因るところが大きいです。尾瀬の自然のベースとなっている部分を知っていただき、より深く尾瀬に興味を持っていただきたい」と語るのは、環境省の桑原大国立公園管理官(以下、桑原管理官)。「展示は全般的になるべく視覚や体感で理解する内容に努めています」とのこと。
自然環境の学習は私たち大人はもちろん、未来を担う子どもたちにこそ学んでほしいものです。
「小中学生向けの体験学習においてはビジターセンターが中心拠点になることを期待しています。今回の建替えでレクチャー機能が充実しましたので、今後はイベントなどの運営体制をさらに充実させていきたいです」と桑原管理官。初代・二代目ビジターセンター同様、子どもたちが尾瀬の自然に関心を持ち、その尊さを気づいていく場になってほしいものです。
福島県では2015年から環境省の委任を受け尾瀬沼地区の再整備を進めてきました。今回のビジターセンターの建替えは再整備事業の一環として行われています。
再整備計画によれば旧ビジターセンターを解体・撤去後、2025年をめどに跡地には新しく中央広場が建設予定となっています。まだまだ先の話ですが、「たくさんの人々が集まって尾瀬の自然を愉しみながら知ることができるイベント等を開催できたら」と桑原管理官。
新型コロナウイルス感染症のいち早い終息を願うばかりです!
最後に過酷な現場条件下で工事に従事される関係者の皆さんの苦労に感謝し、引き続きの工事の安全を祈り、このレポートの結びといたします。