尾瀬屈指の景観美を誇る熊沢田代を経て、トラバース、沢筋の急登と手応えのある登山を楽しみながら登頂する尾瀬最高峰の燧ヶ岳。2つの頂上からは四方すべての山嶺を見渡すことができます。
御池登山口から入ってすぐの分岐を左に行くと燧ヶ岳登山の始まりです。本コースは2つの田代があるひな壇状の裾野を登ります。各ひな壇の取りつきはいずれも急登です。息が上がったら数分の小休憩を取り、再び上を目指してください。
暗く湿った急登を制した褒美のように平らに広がる田代。ここはワタスゲの大群落があり、7月上旬~中旬に見頃を迎えます。
広沢田代を渡ると再び急登です。しかし最初とは違って空が抜けはじめます。振り返れば会津駒ヶ岳の稜線が見渡せるでしょう。
2つ目の急登を終えると縦に長い湿原が広がります。尾瀬有数の景観美を誇る熊沢田代です。田代の鞍部に2つの池があり、晴れた日は青空を映し、登山の疲れを癒やしてくれるでしょう。
熊沢田代を越えるといよいよピークハントです。火山らしい山肌となり、沢筋の岩稜帯やザレ場を横切るトラバースがあります。晴れた日はなんのことはない登山道ですが、残雪や雨天は要注意。慎重に足を進めましょう。
登山開始から標準タイムで4時間、燧ヶ岳登頂です。本コースで最初に登るのは俎嵓(まないたぐら)。標高2,346メートル。眼下の尾瀬沼から視界を上げていくと、那須岳、日光男体山、日光白根山と関東の山々が一望。北を向けば会津駒ヶ岳、その奥の東北の山嶺が地平線へ続きます。頂上には開山の祖である平野長蔵が担いで建立した石祠燧大権現が祀られています。
俎嵓の向かいの頂上が柴安嵓(しばやすぐら)です。標高は燧ヶ岳最高点の2,356メートル。こちらの眼下は尾瀬ヶ原。平ヶ岳や越後三山も見渡せます。
登山全般にいえることですが、下山時は疲労がある中で足腰の踏ん張りを利かせなければなりません。転倒や滑落に注意しましょう。膝に自信のない方はテーピングやサポーターを利用するのも一つの手です。また段差の大きい箇所を降りる際は三点確保を行い、着地を確かめてください。
本コースは燧ヶ岳の北面を登るルート。周知のように北半球の山嶺が最後まで雪を残すのは北側です。残雪に気をつけて、状況によってはアイゼン、ピッケルなどの装備を携行しましょう。雪山装備のない方は残雪登山を避けてください。