尾瀬の麓、檜枝岐村と南会津町は特別豪雪地帯にも指定された⽇本屈指の降雪量を誇る地域。積雪が3mを超えることもあり、年間平均気温は、なんと北海道の札幌の9.2℃よりも低い7.7℃です。寒冷な気候と標⾼の⾼い⼭合いの地形のため作物は限られたものしか穫れず、独⾃の⾷⽂化が形成されてきました。今回はこうした尾瀬地域ならではの⼟地条件のもとに⽣まれた「ふくしま尾瀬」のおみやげをご紹介します。
檜枝岐村を代表するおみやげの⼀つがはちみつです。⾃然豊かな檜枝岐村では季節によって様々な花のみつが採れますが、春先(6月頃)の限られた時期だけ、トチノキの花の単花みつである栃みつが採れます。収量は限られていて、秋には売り切れになってしまうことが多いため、村⼈は新物が出回ると購⼊される⽅が多いです。
栃みつは雑味がなくほのかな花の⾹が漂う⾷べやすいはちみつといえるでしょう。⼀気に⾷べても強い⽢さで「ケホっ」とむせ返ることがありません。ヨーグルトに⼊れたり、パンケーキにかけたりと、トチノキの花の⾹りと⾵味を楽しむ⾷べ⽅がオススメ。私も、こちらに移り住んで初めて⾷べたときの⾹りの良さは今でも覚えています。
⼭林が⾯積の9割を占める檜枝岐村。厳しい気候のため国⽴公園の指定を受ける以前から森林開発や植林があまり⾏われず、⼿つかずの森林が残されてきました。トチノキが今でも多く残っているのはそのためです。2007年の尾瀬国⽴公園の制定によって特別保護地区が拡⼤されたことも保護に⼀役買っています。伐採を免れてきた⽴派なトチノキは6⽉にたくさんの花を咲かせて良質なみつをたっぷり花に蓄えます。
栃みつは、開花状況やみつを何⽇巣箱にいれたままにするかによって糖度や⾹りが変わるそうです。檜枝岐養蜂場の平野公樹さんは、「ミツバチの気持ちになって採みつの時期を考え、はちみつの量を採ることよりも、糖度が⾼く質が良いはちみつを採れるよう努⼒しています」とのこと。⼀番美味しい時期に絞るために、⼿間ひまを惜しまず採みつされた栃みつは、⼿作業でていねいに瓶詰めされて出荷されます。
檜枝岐村ではもともと「薬味」と呼ばれて蕎⻨に必ず付いていた⼭⼈漬。寒冷な檜枝岐村でも収穫できるミョウガとシソ、ラッキョウ、トウガラシを使⽤し、各家庭で作られてきました。
「⼩さい頃から薬味は蕎⻨に必ずついてくるものでした。これを商品にしたのは8年ほど前。⺟から作り⽅を教わったのがきっかけです。完成した商品は世間⼀般的な薬味と混同されないように、⼭⼈漬と命名して販売を始めました」と⼭⼈家の星秀和さん。今では檜枝岐村の特産品として⼈気を博しています。
⼭⼈漬は様々な料理に使⽤することができます。冷奴にのせても良し、卵焼きにいれたり、おにぎりの具にしたりと⼤活躍。ピリリと⾟く⾹り豊かな⼭⼈漬けはアレンジ次第で様々な料理に活躍します。もちろん蕎⻨の薬味としても天下⼀品。私は檜枝岐に移り住んでから蕎⻨に⼭⼈漬がないと物⾜りなく感じてしまいます。
⼭⼈家の⾷堂では⼭⼈漬を使った料理を⾷べることができます。おにぎりやうどん、⼭⼈⼭菜スパゲッティに使⽤されているので、試⾷を兼ねてぜひご賞味ください。和洋問わずに⽤いられるのできっと重宝されると思います。
舘岩産の蕎⻨は標⾼が750mから900mほどの寒暖の差が⼤きい⾼地で栽培されるため、⽢みが強く⾵味豊かになります。蕎⻨畑は雲海ができる⼭の斜⾯に広がり、⽔はけの良い地質と夜霧の適度な⽔分が平野部より質のよい蕎麦を作り出すようです。
蕎⻨の栽培に適した舘岩地区で農業法⼈を営む会津⾼原たていわ農産の星安彦さんにお話を伺いました。
「昔から作られている在来種を絶やさないよう努⼒しています。在来種は地元の蕎⻨屋で⼗割蕎⻨として使われており、⾹りと味の評判はとても良いです。加齢によって離農する⽅も多いため、耕作地をお借り受けて地域の畑を荒廃させないように努めています」と星安彦さん。
⾵味と⾹りを逃さないために蕎⻨の乾燥は熱をあまり加えずに時間をかけて⾏われます。収穫した時期によっても⽔分量が違うため蕎⻨の状態に合わせて細かく乾燥時間を調整しているそうです。蕎⻨の⾹りの秘密は乾燥にもあるんですね。
そば処曲家では舘岩在来種を使った蕎⻨や蕎⻨がき、蕎⻨饅頭が⾷べられます。福島に移り住んでから蕎⻨の⾹りを知り、うどん派から蕎⻨派へ転向しました。⼗割蕎⻨の⾹りの良さは素晴らしいですね。
道の駅番屋では館岩産の⽞そばと蕎⻨粉を扱っています。⽞そばとは殻付きの蕎⻨の実です。蕎麦打ちの腕に覚えのある⽅はぜひ。⾷堂では舘岩産の蕎⻨を⾷べられるのでこちらも試⾷の代わりにお試しください。